【開催報告】「Shaking the Spear」 同窓会

2019年9月21日にMr. Gavin BantockとMr. Merwyn Torikianの来日周年記念英語劇公演「俊寛」が公演されてから3年4か月が経った2023年1月22日(日)に、再び英語劇が好きで、制作に参加したい思いを持つ麗澤大学卒業生、明徳義塾卒業生及び教師ら15人*1 が役者として集結し、バントック先生書下ろしのシェイクスピア・ファンタジア「Shaking the Spear」を麗澤大学生涯教育プラザホール(通称「小劇場」)にて上演しました。年齢が何と45年も離れている卒業生が集まり英語劇を上演する、このような事が可能なのは麗澤大学だからこそだと思います。人数は少ないのですが正に大同窓会なのです。

今般の英語劇は2022年3月に発足したPEN *2 (Playhouse English Network)の活動の1つで、元々予定していたチェーホフの「かもめ」がロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響で取り止めとなり、PENコミッティーで協議を重ねた結果、空港ラウンジで「Spear Jet International(スピア ジェット インターナショナル)」のフライトを待つ乗客にシェイクスピアの広く知られている名セリフを朗誦させるだけでなく、動画をふんだんに使い、言葉遊びも採り入れる上演内容としました。脚本・演出は「俊寛」に続いてMr. Gavin Bantockで演出補佐及び動画作成をMr. Merwyn Torikianが担当しました。又、ライブ音楽と歌を含めた上質なコメディ作品となり、作品中で使った効果音や音楽は約40種類に上り、酒井伊幸(41期)さん、澤田次郎(47期)さんと私が担当し、昨年の8月頃から作り始めました。使用された歌は私が麗澤大学時代にバントック先生が書いた詞に曲を付けたもの、又、1976年に麗澤大学英語劇グループにより上演された「ジュリアスシーザー」でLucius(今般の劇でLucius Gardner役で出演した森川嘉之(39期)さん)が歌った楽曲でいずれも47年前の作品です。このクラシックとも云える4曲を今般の劇に使って頂いたバントック先生には、この場をお借りして感謝したいと思います。

さて、ストーリーは、風変わりな乗客達が「ゲート2023」でフライトを待つ間、それぞれ得意なシェイクスピアのスピーチをエンターテインメントとして朗誦して、自己紹介やコミカルな会話のやり取りをしながら、南柏国際空港からカリフォルニアのオークランド経由、柏へ向かうフライトを待っているというあり得ない設定ですが、その待合室でそれぞれの登場人物が織りなすダイアログやそれらの伏線を回収して最終的には柏ではなくイングランドへ向かう流れとなります。そして、最後に、イギリスと日本は同じ島国で、最後に帰る場所はそれぞれの美しい故郷にあるというモチーフをベースにしたI Have a Longingという歌をギター2本の生演奏で役者全員が歌いフィナーレを迎えました。

公演当日、小劇場は寒風にも拘わらず約80席が満席となり役者一同感激しました。特筆すべきは公演の終わり近くになった時に、最前列の席でご覧になっていた麗澤大学名誉教授田中駿平先生を役者が舞台に招請し、飛び入りとしてステージに登場して頂き、長年披露されたいと願っていらっしゃったハムレットに出てくる「オフィーリア」の歌を情感たっぷり且つ悲哀を込めてアカペラで歌って頂いた事です。これには観客席から拍手が沸き起こり先生の少々はにかんだ笑顔がとても印象的でした。間違いなく公演にキラッと光る彩りを加えて下さった想い出に残るイベントになりました。

今回のプロダクションも前回の「俊寛」同様、社会人が役者のほとんどを占めていましたのでなかなか全員の都合が合わず、公演当日に初めて全員が揃うという難しい状況でした。それを克服するために個人練習は勿論ですが、オンライン読み合わせの機会を設け、会話のやり取りのタイミングを練習するという工夫もしました。練習の場合でも、生きた演技をするには役者それぞれの生き生きとした熱量の放射が必要なのです。それにはシナリオを見ながらの演技ではなくセリフを全て覚えてしまう事が必要でした。又、動画のタイミングに合わせてセリフを話すという離れ業のような演出に悩まされたのも事実でした。ただ、皆が持つ英語劇への情熱とバントック先生の的確で厳しい指導の下で劇を作り上げるという大きな喜びが相乗効果を生んで情感溢れるコメディを創り出すことが出来ました。

サウンドと効果音を事前に録音した長さに演技を合わせるという、数十年前には考えられなかった演出もありました。ただ、プラザホールが改修された事で照明器具や音響機器が最新の機材に刷新され、プログラミングで照明や音出しが制御出来、又、動画を投影するプロジェクターを使用出来る事で観劇する観客の楽しみ方も変わりました。今回の公演は役者にとって大きなチャレンジでしたが、観る側も今までと違う楽しみ方が出来たので貴重な機会となりました。脚本にはシェイクスピア作品の中でも有名な「リア王」、「ハムレット」、「ジュリアスシーザー」、「マクベス」、「真夏の世の夢」等の名スピーチが含まれていて、役者達は感情を込めて演じ切り、観客から惜しみない賞賛の拍手が送られたのでした。

コロナ感染症の拡がりが収まっていない中での公演でしたので、感染対策に注意を払い、劇場内でのマスク着用と受付では入場者一人ずつ検温をお願いし、役者の発話による飛沫対応への注意喚起など徹底しました。

最後になりますが、今回の公演には麗澤大学麗澤会及び麗澤大学英語劇グループの後援を頂いたこと、この場をお借りして御礼申し上げます。

文責 37期卒 永森久隆

*1
上田恵介(37期)、永森久隆(37期)森川嘉之(39期)、酒井伊幸(41期)、澤田次郎(47期)、山田治(59期)及び息子の倫瑛、林大輔(63期)、鈴木隆大(76期)、浦田あやか(77期)、和智太誠(80期)、渡辺千恵里(80期)、和田理(麗澤中高等学校教諭)、大西菜々海(明徳義塾2018卒、上智大学2022卒)、郭禹材(明徳義塾2019卒、上智大学3年生)

*2
プレイハウス イングリッシュ ネットワーク(Playhouse English Network)とは麗澤大学英語劇グループ・明徳義塾インターナショナルプレーヤーズの卒業生を中心としたグループで、英語劇の上演、英語を使ったイベント・活動等をすることを目的とする集まりです。
連絡先:playhouse374@gmail.com

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